いまさらながら、
IT化とデジタル化(DX)の違いとは?
【CEO COLUMN Vol.2】
株式会社DNTI代表取締役社長の西村です。
今回のCOLUMNでは、いまさらながらDXの取り組みが1〜2巡したところで「IT化」と「デジタル化(DX)」の違いについて、あらためてお話ししたいと思います。
これまで多くの企業がIT化を進めてきましたが、昨今のビジネス環境では単なるIT化を超えたデジタル化(DX)が求められています。この両者の違いを理解することは企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するために非常に重要です。
本文ではまずIT化、デジタル化(DX)とは何かを説明し、その後デジタル化の目的や特徴そして具体的な失敗例とその対策について詳しく解説します。特にデジタル化における典型的な勘違いや、そこからプロジェクトの失敗に繋がる理由にフォーカスして、どのようにすれば成功に導けるかをご紹介します。
デジタル化を正しく理解し実践するためのポイントをお伝えすることで、皆さんの企業活動に少しでも役立てれば幸いです。それでは、始めましょう。
IT化とは
IT化とは、主に業務プロセスの効率化や自動化を目的とした技術導入を指します。
例えば、紙で行っていた書類作成やデータの管理をコンピュータや専用ソフトウェアで行うようにすることなどです。具体的には、会計システムや在庫管理システムの導入などが該当します。IT化の目的は、主に業務の効率を向上させることです。
導入においては、システム企画から要件定義、システム設計、開発、サービスイン(移行とユーザー受け入れテスト)、保守/運用といった工程で進行します。システム部門が中心となり構築ベンダーとしてSIerやコンサルティング会社にアウトソースすることが多いです。
デジタル化とは
デジタル化とは、デジタル技術を活用してビジネスモデルやプロセス、製品そのものを革新し新たな価値を生み出す取り組みを指します。IT化と比較してデジタル化はより広範囲にわたる概念であり次の3つの段階に分類されます。
「デジタイゼーション」
アナログ情報をデジタル化すること。例としては、紙の文書をスキャンしてPDFに変換する作業が挙げられます。これはIT化の初期段階とも言えます。
「デジタライゼーション」
デジタル技術を利用して既存の業務プロセスを改善すること。例えば、手作業で行っていたデータ入力を自動化するシステムを導入することが該当します。ここでは、業務効率の向上やコスト削減が主な目的となります。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」
IT化の一歩先を行く概念で、AI、ブロックチェーン、クラウド、モバイルなどのデジタル技術を活用してビジネスモデルやプロセス、製品そのものを革新し、新しい価値を生み出すことを意味します。また、新しい価値を生み出すだけに留まらず、ビジネスモデルや企業文化そのものを変革することまでを目的としています。
導入時にはユーザーにとっての付加価値を生み出すために、ユーザー体験(UX)の検討が不可欠で、ビジネス、テクノロジー、ユーザー体験の3つが分かる人材ーいわゆる「プロダクトマネージャー」が中心となって進める必要があります。
注意点:デジタル化は、デジタイゼーションからデジタライゼーション、さらにはDXまでを包括する広義の概念です。しかし、一般的にはDXとデジタル化が同一視されることが多く、厳密には異なるフェーズを含んでいることを理解することが重要です。
IT化とデジタル化の主な違い
前文ではそれぞれIT化とデジタル化についてお話しました。それらを踏まえ簡単にIT化とデジタル化についての違いを目的、技術、アプローチに分けてまとめてみましょう。
⚫︎目的の違い
IT化は主に業務の効率化が目的ですが、デジタル化は付加価値の創出や新たな価値の提供までを含めて目的としています。
⚫︎技術の違い
IT化は既存のシステムやプロセスをシステムに置き換えることに重点をおきますが、デジタル化はAIやクラウドなどの最新技術を活用し、より高度なユーザー体験を提供します。
⚫︎アプローチの違い
IT化は主にシステム部門とベンダーによって、構想策定、要件定義を経て、数年にわたる計画を立ててから、システム設計・開発へと、ウォーターフォールアプローチで進めるのに対し、デジタル化はビジネス、テクノロジー、ユーザー体験の統合的な視点から進められプロダクトマネージャーが中心となって、短サイクルの開発と検証を繰り返すアジャイルアプローチで進めることが多いです。
これら3点の違いを正しく理解していないと、デジタル化を進める上での大きな障害となってしまいます。
デジタル化プロジェクトにおける失敗に繋がる勘違いとはどのようなものか
では続いて、失敗に繋がる勘違いの具体的な内容と簡単な対策をご紹介します。
デジタル化プロジェクトにおける陥りがちな失敗のポイントを理解することは、成功への道を切り開く重要な一歩です。
1.投資判断の基準を勘違いする
概要
多くの企業がデジタル化プロジェクトに伴うデジタルサービスの導入を従来のITシステムと同じように考えてしまい、投資判断を誤り具体化しない。
具体例
最終的に目指すビジネス規模からの逆算と過去のIT投資の経験から、開発にかかるコストと時間を過大評価する。たとえば「数年で、数億円かかる」としてしまい、プロジェクトの初期段階で止まってしまう。
対策
PoC(概念実証)やMVP(実用最小限の製品)など、試行錯誤を繰り返す、迅速で低コストなアジャイルアプローチを採用する。小さな成功を積み重ねることでプロジェクトを段階的にスケールアップする。
2.プロジェクトマネージャーがいればできると思っている
概要
プロジェクトマネージャーがいればデジタル化が成功すると誤った考えを持ってしまう。
具体例
「プロジェクトマネージャーがいないから進められない」「プロジェクトマネージャーがいても進まない」のか、何故かわからないまま時間が経って行く。
対策
プロジェクトマネージャーは、要件定義されたシステムのQCD(品質、コスト、期限)を守る役割に限定されることが多く、付加価値を生み出し、サーピスを継続的に改善するビジネスモデルを維持する役割を担えない。
デジタル化を成功させるために必要な人材は、従来のプロジェクトマネージャーではないことを理解し、ビジネス、ユーザー体験、テクノロジー、SaaSビジネスの知識と経験を持つ人材(プロダクトマネージャー)を登用する必要がある。
3.「ユーザー体験」を無視する
概要
ユーザー体験(UX)の重要性を理解せずユーザーの視点を考慮しないサービス開発を行ってしまい、ユーザーにとって使い難く満足度も低くなることで、ユーザー離れ、評判の低下、コストの増大、競争力の低下など、ビジネスにとって深刻な問題を引き起こす。
昨今のユーザー体験は社内システムにおいても求められ始めていることも付け加えておきたい。
対策
「ユーザー体験」を重視するには、使いやすいインターフェース、パーソナライズ・シームレスな体験、迅速なサポート、持続的なインタラクション、ユーザーフィードバックの反映、デザインの一貫性など多岐にわたって重要な要素となる。
開発においてはUXデザイナーやUIデザイナーだけでなく、フロントエンド開発者、バックエンド開発者、データアナリスト、QAエンジニア、カスタマーサポートスペシャリストなど、多様な専門家が協力することが不可欠であり全体を統括しプロダクトの成功にコミットするプロダクトマネージャーの役割が大切である。
4.IT部門に任せておけばデジタル化を実現できると思い込む
概要
デジタル化の進展により従来のIT部門が担っていた役割が変化していることを理解せずこれまで通りの技術、体制、手法でスタートしてしまう。
従来のIT部門は主にオンプロミスシステムや社内インフラの管理を担当してきた。
しかし、デジタル化ではクラウド、モバイル技術、アジャイル開発など新しいスキルが求められる。これを理解せず従来の方法でプロジェクトを進めようとしてしまうと以下のような問題が発生してしまう。
プロジェクトの遅延:新しい技術に対応できずスケジュール通りに進行しない。
コストの増大:外部ベンダーに頼りすぎることで予算を超えるコストが発生する。
品質の低下:新技術の習得が不十分なまま進行するため成果物の品質が期待以下になる。
対策
●IT部門のスキル強化
新しい技術に対応できるようにIT部門のスキルを強化する。
●外部ベンダーとの協力体制
外部ベンダーとIT部門が協力しプロジェクトを進める体制を整える。
●段階的なアプローチ
デジタル化を段階的に進めIT部門が新技術に順応できる時間を設ける。
5.効率化だけに飛びつく
概要
デジタル化の本質である付加価値の創出を見失い単なる効率化に注力してしまう。
具体例
ローコード/ノーコード、RPAなどを全社で取り組み、これをデジタル化と誤認する。
付加価値を生む視点がかけているばかりか、各部門や個人で取り組んでいるため、個別最適が極端に進むことになる。
対策
●戦略的投資
効率化ツールを活用しつつもユーザーにとっての付加価値を最重視した戦略を構築する。
●付加価値の創出
デジタル化の目的を「効率化」ではなく「価値向上」に設定し、新たな価値を提供するサービスを目指す。
これらは数ある失敗例のほんの一例でしかありません。デジタル化、IT化、DXなどの言葉が広まる現代でも、いまだ勘違いや間違った認識も多く存在しています。デジタル化は一筋縄ではいかない試みである一方、正しいアプローチと持続的な努力により大きな成果をもたらすことができます。
CEO COLUMN総括
デジタル化(DX)は単なるIT化と異なり「付加価値を生み出すこと」「新しい価値を提供できること」が重要な鍵になります。
デジタル化(DX)を成功させるためには、まずはユーザー体験を重視したアプローチを行い、ビジネスとテクノロジーを理解できる人材が必須です。
皆様の企業のデジタル化において、以上の点をしっかりと押さえていただければと思います。
私たちDNTIは皆様のデジタル化をご支援していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。